ガラッと大きな音と共に部室に飛び込んできたのは、甲高い声と四十代後半くらいの女の人。

え、と思う間もなく、その女の人は真央くんの姿を認めると、その勢いのまま真央くんに抱き着いた。


「真央、まお、私の真央っ」

「困ります遠藤さん!」

「まおっ」

「遠藤さん!」


バタバタという足音と、聞き覚えのある声。

後ろから追いかけてきたのだろう、息を切らした古賀先生が部室の中に入ってきたかと思えば、女の人の両肩を掴んで真央くんから引き離そうとする。


あまりの衝撃に声が出ない。

ぼうっとしながらその様子を眺めていると、さらにもう一人、男の人が入ってきた。


「おい! 急に抜け出したりしてどうしたんだ、帰るぞ!」

「まお、真央元気? ご飯ちゃんと食べてる? 寂しくない?」

「遠藤さんっ!」

「ああ、こんなに大きくなって、ねえ、この絵は真央が描いたの? やっぱりあなたはママに似て才能があるのね」

「ほら、帰るぞ!」