「そういえば、私がトランペットを吹いてる絵が下駄箱に入ってたこともあったな。あまりにも上手すぎて嫌味かと思っちゃったけど」
「……」
「……って、ごめん。しゃべりすぎた」
視線はキャラ弁に向けたまま謝る。もちろん隣からの返事はない。
こんな話を聞かされて、真央くんはきっと迷惑に思っているだろう。
お箸でブロッコリーをつまむ。もそもそと口を動かして、ゆっくり飲みこんだ。
お母さんに吐いている部活の友だちと食べているという嘘が、今日は本当のことになったな。そういえば真央くんはもうお昼ご飯を食べたのかな。
「ねえ、真央く……」
もう食べたの、と。ふと浮かんだ疑問を口にしようと隣を見て、言葉を失った。
色素の薄い瞳はまっすぐ私を見ていて。
キメの細かい肌の上を、雨粒のような涙が滑り落ちていた。
あまりにも綺麗な泣き顔に、時間が止まったような、音が消えたような感じがした。