「……え」


顔を上げると、机の上に置かれていた箱ティッシュ。

いつの間にか隣のパイプ椅子に座っていた真央くんが、顔は前を向いたまま、それを押し付けるように私のほうへと滑らせた。


……びっくりした。

まずここに真央くんがいたことを忘れていてびっくりした。真央くんが隣に座るなんて思ってもみなくてびっくりした。真央くんが箱ティッシュを渡してくれてびっくりした。

びっくりしすぎて気が抜けて、さらにくしゃりと顔が歪む。

遠慮なくティッシュを貰って涙を拭いて鼻をかんで、また溢れてくる涙を受け止めた。



私が泣いている間、真央くんはただ隣に座って、いつものように絵を描いていた。

直接的に慰められているわけではないのに、それがじんわりじんわり心に沁みて、温かいお味噌汁を飲んだみたいな気持ちになる。

シャッシャッと鉛筆が走る音を聞いていると、だんだん涙が落ち着いてきて、ふう、と息を吐けば随分とぬるくなっていた。






「……中学で、吹奏楽、やってたの」


気づけばぽつり、呟いていた。