「……あ」
前を歩いていた三人組の女子生徒。そのうちの一人がハンドタオルを落とした。
咄嗟に拾って声をかけようとすれば、向こうもそれに気づいたのか小走りでこっちに向かってくる。
「すみませーん、それ私のです!」
「あ、いえ」
「って、あれ、葵ちゃん」
「へ」
ハンドタオルを差し出せば、不意に呼ばれた名前。
驚いて顔を見ると、そこにいたのは先月まではよく話していた子だった。
その子の後ろから、もう何やってんのー、と追いついてきた二人にも見覚えがあって。
サッと少し俯いて長い前髪で壁を作った。
「久しぶりだね、元気?」
「うん。……みんなも元気そうだね」
「いやー、うちらもうクタクタだよー。今度コンクールがあって一年もオーディションに……」
そこまで言って、目の前の子はハッと口を覆う。
気まずそうに視線を泳がせて、後ろに立つ二人に助けを求めるかのように振り向いていた。
何ともいえない空気と、気を遣わせてしまっているという罪悪感で、居たたまれない気持ちになった。