「サッカー部のみなさんこんにちは! 洗濯部です!」
そんな考え事をしているうちに辿り着いたのは、グラウンドの一番奥。サッカー部のところ。
日向先輩が声をかけると、部員さんたちは一瞬動きを止めて。
これまでの部と同じように挨拶を返してくれるのかと思いきや、何事もなかったかのように動き出した。
「……え」
思わず声が落ちた。
ぽかんと口を開けて目を見張る。
「ね、気合い入れる必要なかったでしょ」
紫苑先輩が前髪を触りながら、吐き捨てるように言ったのが聞こえた。
日向先輩はとくに気にする様子もなく、マネージャーと思しき女子生徒のほうへ向かう。
「こんにちは、洗うものありませんかー?」
「……あの、いつも言ってますけど、うちはそういうの大丈夫なので」
マネさんはそう言って、日向先輩から目を逸らす。
この状況はいつものことなのか。日向先輩はマネさんの言葉を聞いて、慣れたように笑顔を見せた。
「もし何かあったら気軽に言ってください! 俺ら洗濯のプロなんで!」
「……ああ、はい」
マネさんは小さく頷いて、そそくさとその場から去って行く。
残された日向先輩はその後ろ姿に声をかけることはせず、くるりと踵を返して私たちのところに戻って来た。