次に向かったのは野球部のところ。
日向先輩が挨拶をすれば、部員さんが帽子をとって気持ちのいい挨拶を返してくれた。
みんな坊主でよく焼けていて、まさに高校球児という感じだ。
「洗うもんある?」
「今日は特に無いかな。週末に試合あるから、またユニフォーム頼むわ」
部長さんらしき人と言葉を交わして、手ぶらで戻って来た日向先輩はすぐさま次の部活へと向かう。
私は汗と泥の匂いがするかごを息を止めながら抱え直して、その後ろを追いかけた。
「こんにちは、洗濯部です!」
「こ、こんにちは……」
「もっと腹から声出す! こんにちは、洗濯部です!」
「こっ、こんにちは、洗濯部です」
「葵ちゃんいいわよ~、その調子」
「いや紫苑先輩も応援してないで声出せよ」
「……大きい声出ないのよね」
白々しくそう言って、紫苑先輩はにっこりと笑う。
嘘だということは分かるけれど、その美しい笑顔に何も言い返せない。貧乳、と舌打ちしながら呟いた日向先輩は、紫苑先輩に足を踏まれて悶えていた。
真央くんはその光景に慣れているようで、特に興味も示さず突っ立っている。