その日以降何も書かれていない日誌を、パタンと閉じた。


誰もいなくなった五号館二階奥の空き教室。

“死にかけ”ばかりが集うと噂されているそこは、ある人に言わせれば一時避難所であり、ある人に言わせれば更生施設である。


そんな部活の顧問を任されたとき、生徒たちから魔女先生と呼ばれている養護教諭は、そこが“死にかけ”たちの居場所になってほしいと思った。


人は人からの影響を、良くも悪くも受けている。

多感な時期の彼らが“洗濯部”の部員として関わり合うことで、何かが生まれていくのではないかと考えた。


たくさんの生徒がここで成長していく姿を見守ってきた。

明るい表情でここを出て行く姿にやりがいを感じてきた。


ベランダでは、保健室で使う白いシーツがはためいている。

絵が飾られている壁側の窓を開けて、大きく息を吸い込んだ。空は快晴。夏の匂いがしている。


「洗濯日和、だなあ」


登校してくる生徒たちを見下ろしながら呟けば、その声は楽しげな色がしていた。