しかし。



「……」

「……」


すぐに戻って来るかと思った日向先輩は、紫苑先輩を連れ戻すのに思ったより手こずっているようで、なかなか戻って来ない。

荷物を抱えて不機嫌そうな真央くんと二人きり。流れる沈黙が鉛のように重い。


「……あ、あの」


何も話さないのもどうかと思って口を開くけれど、すぐに後悔する。だって話すことがない。

どうしよう、と目を泳がせていれば視界に入った洗濯物。


「それ、そんなに重たいの?」

「……」


返ってくるのはやはり沈黙。ですよねー、と思いながらも洗濯物を指差した右手は力なく下りていく。

気まずい空気をさらに気まずくしただけの自分に泣きたくなった。



どうしてこうも、人と関わるのが苦手なんだろう。

ちょっと前まで普通にできていたはずなのに。


閉め切った窓、こもる熱気。酸欠になりそうだと思いながら流した汗。

忘れたいのに忘れられないあの記憶が、ぐるりと頭の中を駆け巡る。




やっぱり、私には――。