五号館の玄関に出ると、いつの間にか雨は止んでいた。
まだ雲の残る空は綺麗な夕焼けをしていて、遠くに虹が架かっていた。
「ねえ真央くん、一つ約束をしませんか」
隣に立つ彼女が不意に口を開く。
じっとその顔を見下ろせば、彼女は同じように彼を見上げる。
「ここを出て洗濯部の部員じゃなくなっても、他愛のない話をしたり、お茶をしたり、たまに一緒に帰ったりするような友だちでいてくれませんか」
「……友だち」
「うん、友だち」
一点の曇りもない彼女の瞳に、溜め息を吐きそうになって寸でのところで止めた。
「……まあ、今のところは」
「え、友だちになるの嫌だった!?」
「いいよ、それで」
前を向いて生きていれば、いつかきっとこの関係を発展させることができるのかもしれない。
そう思えるくらいに、清々しい風が吹き抜けていく。
せーの、で彼女と一緒に踏み出した一歩は、可能性に溢れた未来への一歩だった。