「な、なにそれ、不意打ちは卑怯だ……っ」
「……」
「っていうか私まだお礼言われるようなことしてないし、真央くんが抱えてるものの重さを知らないよ……っ」
「いや、……もう、退部、する」
「へ!?」
途切れ途切れに答えると、素っ頓狂な声が返ってくる。
もしかして私がいなかった間に自力で解決してたの、と頭を抱えた彼女はすっかり涙が止まってしまったようだ。
たった今、紛れもなく彼女が戻ってきたおかげで彼は声を取り戻すことができたというのに、まだまだ自己評価の低い彼女はそのことに気づいていないらしい。
困惑している彼女の頭にタオルを乗せれば、ようやく自分がびしょ濡れだったことを思い出したようで、くしゃみをしながら拭いていた。
「え、あ、っていうか! さっき日向先輩に会ったらこの二週間くらい洗濯部が回収来てないって言ってたんだけど、さぼってたの?」
「……」
「え、なに? なんで?」
壁に飾る用の彼女の似顔絵が、どうしても上手く描けなくて何度も描き直していたから。
そう正直に言えば、さすがに引かれるだろう。その質問には無言を貫いて、さっさと部室のドアのほうへと向かった。