それはスケッチブックの一ページ。

何度も何度も描き直した、トランペットを吹く彼女の似顔絵。


弾かれたように顔を上げると、彼女はふうっと大きく息を吐き出してから、こう切り出した。


「真央くんがいつから私のことを知ってくれていたのか、正直私はよく分からないんだ。中学校が同じだったことも知らなかったから」


窓の外ではまだ雨が降り続いていた。

このままだと彼女が風邪を引いてしまうのではないかと思ったけれど、その絵を持っていてくれたことに驚いて、立ち上がることすらできなかった。


「この絵をもらったときも、すごい失礼だけど嫌味だと思った」


この言葉が真央くんを傷つけていたらごめんね、と呟く彼女は彼の目をじっと見ていた。


「だけど私、真央くんがいつも隣にいてくれて、背中を押してくれて、目を逸らさないでいてくれたことが、すごく嬉しかったし、心強かったし、頼もしかった」


だから、と彼女は言葉を区切る。

大きく息を吸って、吐いて。