そう思っていた、のに。
ガラッと部室のドアが開いた。
「真央くん!」
――自分は、夢でも見ているのだろうか。
何故か全身濡れた状態の彼女が飛び込むように部室へ入ってきた。
「今から私、すごく都合のいいことを言うかもしれないけれど、聞いてくれませんか!?」
状況をいまだ理解できず、ぽかんと口を開けたままの真央に、びしょ濡れの彼女は言い放つ。
少し前までのおどおどした彼女は一体どこへ消えたのか。前髪を留めたヘアピンがきらりと光った。
「この似顔絵をっ、真央くんが描いてくれたものだと仮定して話をします」
走ったのだろうか。肩で息をした彼女は、その左手に持っていた紙を彼に見えるように広げた。