「よし、じゃあそろそろ次行くぞ! 真央これよろしく……ってどうした、また喧嘩か?」


にこにこと笑顔を振りまきながら戻ってきた日向先輩は、私たちの間に漂う微妙な空気に首を傾げる。


「け、喧嘩はしたことないです……」


というより相手にされていないと思います、と心の中で付け足して答える。

真央くんにビブスが入ったかごを渡しながら日向先輩は意外そうに、へえ、と呟いた。

どっさりと洗濯物が入ったかごを押し付けられた真央くんは、眉間に皺を寄せてすごく嫌そうな顔をしていた。


「紫苑せんぱーい! 次行きますよ!」


呼ばれた紫苑先輩は、いまだラグビー部の部員さんに囲まれている。ガタイが良い部員さんの隙間から、ぽつりと日傘だけが見えていた。


「おーい、次行くってばー! 時間無いんすよ!」


日向先輩はそう声を掛けるけれど、届いているのかいないのか。紫苑先輩がこちらに来る気配はない。

ここから呼んでも無駄だと思ったのか、もう、と言いながら日向先輩は紫苑先輩を囲む集団のほうへと足を向ける。

それに付いて行くべきか迷ったけれど、動く気配のない真央くんにつられて私もここにとどまることにした。