ありがとうございますっ、と勢いよく頭を下げた。

また走り出した私を心配するような紫苑先輩の声が後ろから飛んできたけれど、私の足は階段を駆け上っていた。



――真央くん。

私、真央くんに聞きたいことがたくさんあるよ。


細部まで描きこんだ下絵に、ぼやっと色を乗せるのが君の絵の特徴だったよね。


『私がトランペットを吹いてる絵が下駄箱に入ってたこともあったな。あまりにも上手すぎて嫌味かと思っちゃったけど』


私のこの言葉は、きっと君を傷つけたんじゃないの。

それなのにどうしていつも隣にいて、背中を押して、瞳を逸らさずにいてくれたの。



一人分の足音が響き渡る。

息はもう絶え絶えだった。


階段の一番上まで上りきった私は、躊躇うことなく屋上へと続く扉を開けた。