「今井、大事な話をしてるから」
「五号館のことだろう。ばっちり聞こえていたさ」
今井さんはそう言って、紫苑先輩と並ぶように私の前に立った。
「言っただろう。あそこは“死にかけ”が集う場所だ」
「ちょっと今井……っ」
「この子も、もう退部しているんだろう。何を隠す必要がある?」
そうだけど、と言い淀んだ紫苑先輩。
私はとにかく五号館への行き方が知りたくて、まっすぐに今井さんの目を見た。
今井さんはそんな私の意思を汲み取ってくれたようで、一度頷いてからこう言った。
「五号館は、本来存在していない場所だ。身も心も健康な人間があそこに辿り着くのは不可能だよ」