「あ、っつ、はあっ!」


じめじめとした暑さがまとわりつくようだ。

時刻はまだ十七時になっていない。いつもなら色んな部活の洗濯物を回収している時間だ。

遠くに見えてきた高校へと走る。ちょうど下校途中の生徒たちが、こそこそと私を見て話をしていた。


グラウンドには、誰もいなかった。

この雨の中部活をするような人はいないのだろう。


「はあ、はあっ」


いくら走り込んでいたとはいえ、吹奏楽部にいたのはもうずっと前のことだ。

荒くなる呼吸を肩で整える。それでも足を止めることはしない。


学校の敷地内へと足を踏み入れる。


そのときだった。



「葵!?」

「葵ちゃん!?」


聞き覚えのある声が私を呼んだ。