「おかえり。いらっしゃい!」


友だちを家に連れて来るのは、すごく久しぶりのことで。

お母さんもいつも以上に気合いが入っているのか、滅多に履かないスカートを履いていた。


「米川さんよね。いつも娘から話を聞いてるわ」

「え、そうなんですか」


吹奏楽部を辞めていたことを伝えたとき、お母さんはとくに驚くこともなく、そう、とだけ呟いた。その反応に逆に私が驚いていれば、ご近所の情報網を舐めるんじゃないわよ、と何とも怖い言葉が返ってきた。

どうやら私が辞めていたことはずっと知っていたらしく、自分から言い出すのを待っていたらしい。

ちゃんと自分の言葉で伝えることができた私を、お母さんは盛大に褒めてくれて、ジャズをやりたいのだと言ったときにも全力で応援をしてくれた。


あとでケーキ持っていくから、というお母さんの言葉を背中に受けながら、私は米川さんと一緒に二階にある自分の部屋へと向かった。


「似てるね、お母さん」

「そうかな?」


お互いに重たかった鞄を床に降ろして、適当に座る。