「紫陽花ってすごいと思わない?」


六月下旬。私が洗濯部を退部してから、二週間ほどが過ぎた。

夏の足音がすぐ近くまで聞こえてきていて、今週末には梅雨が明けるということをお天気お姉さんが言っていた。

しとしとと雨の降る放課後。私は米川さんと並んで、家までの道を歩いていた。


「は? あじさい?」


何がすごいの、と怪訝そうな顔を向ける米川さん。その髪色は今日も明るく、最近また一つピアス穴を開けたそうだ。


「ほら、紫陽花って土の酸度によって花の色を変えるって聞いたことない?」

「ないわ」

「あ、そう……」


この話はどこで聞いたものだったか、もう忘れてしまったけれど。

土が酸性だと青色の花を咲かせて、中性や弱アルカリ性だとピンク色の花を咲かせる。七変化という別名を持つ紫陽花。

会話がストップしてしまってどうしようかと頭を悩ませていた間に、私がその花をすごいと思った理由を米川さんは察したらしく、隣からぶはっと大きな笑い声が聞こえた。