初めて出会ったときはただただ怖くて、仲良くなれる気なんてまったくしなかった。
だけど普段あまり表情の変わらない彼が、時折その瞳を緩めることに気づいたとき、どうしようもなく嬉しくなった。
落ち込んだときも隣で話を聞いてくれた。涙を流してくれたこともある。
その不器用で分かりにくい優しさに、何度も救われた。
今だってそうだ。
きゅっと小さく手に力を込めれば、同じくらいの強さで握り返してくれる。
まるでそれは、隣にいることを約束してくれるかのようで。
「……こんなに心強い味方は、世界中のどこを探してもいないよ」
零れそうになる涙を必死にこらえながら、冗談めかしてそう言えば、彼の瞳も柔らかく細められる。
(だいじょーぶ)
ヒュッと息の音が聞こえる。その口の動きを読んで、葵は小さく頷いた。
真央の両手からそっと抜け出して、もう一度その手をトランペットへ向けた。
ちょっとだけ震えたけれど、しっかりと掴むことができて安堵する。