そんなふうに周りに気を遣わせている自分が、何より嫌いだった。
距離を置いた。
人と関わることを避けた。
前髪を長く伸ばして、壁を作った。
ただ、登校を拒否するような勇気は持ち合わせていなかったから、毎日ちゃんと学校へ行った。同じクラスにいた不登校の子をいつも羨ましく思っていた。
そうやって逃げているうちに、吹奏楽部の友だちとはほとんど話さなくなった。馬鹿みたいに笑って騒ぐこともしなくなった。
高校生になって環境が変われば、また吹けるようになるかもしれないと思って、あまり吹奏楽の強くない学校を選んだ。
でも結局吹くことができなくて、入部してから数週間も経たないうちに辞めてしまった。
「向き合わないと気付けないことってあるんだね」
逃げてばかりじゃ、きっと気付けなかった。
ふうっと息を吐き出してオレンジジュースを全部飲んだ。