「夜にライブすること多いし、バーとかお酒もあるところでしょ。だからあんまり子どもっぽく見られたくなくて、ほら、化粧とかもちゃんとしといたほうが舐められないから」


そう言いながら、くるんと上がった睫毛を触る。

なるほど、言われてみればこの前見たとき、米川さん以外のメンバーは年上っぽい人が多かったな。

納得して何度も頷く私。米川さんはごろんと身体ごとこちらを向いて、聞きたかったことはそれだけ、と首を傾げた。


「あ、ううん」


まだ、まだだ。

一番伝えたかったことを言えていない私は、ぎゅっと手を握って改めて背筋を伸ばした。


「私ね、……すごく心が揺さぶられたんだ。ジャズをしてる米川さんを見て、楽しそうで、自由で、いいなあって」


真央くんに愚痴るように伝えた言葉を、米川さんに。

村瀬さんがデートに行こうと言ってくれなかったら、出会えなかった。日向先輩の友だちが村瀬さんじゃなかったら、それさえも起きなかったことだ。

そっと左のこめかみに触れる。紫苑先輩にもらったヘアピンは、私にはもったいないくらいにキラキラしていて可愛いものだ。それに見合うくらいの人になりたいと、鏡を見ながら思った。