「それで? 話したいことってなに?」


教室の中で話すよりも、幾分落ち着いて話すことができそうだと、米川さんの瞳を見て思う。


「こ、この前の」

「惚れたってやつね。あれどういう意味?」


どうやらかなりサバサバした性格らしく、淡々とした口調で気になることだけを聞いてくる。

他の子と話すときはお互いに気を遣って探り探りになってしまうことが多い私からしてみれば、そんな米川さんと話すのは楽なように感じた。


「私、カフェでその、よ、米川さんがジャズやってるの見て」

「え! まじ?」

「うん。それで、あ、私も昔トランペットやってたんだけど」

「あーそれ知ってるよ。なんか結構最初のほうに吹部辞めたんだって?」


どうして知ってるの、と首を傾げれば米川さんは目を細める。


「あたし地獄耳だから。読書してるふりして噂とか聞くの大好き」

「そ、そうなんだ……」

「意外だと思った?」


そう聞かれて素直に頷けば、ぶはっと米川さんは笑った。