「あら戸田さん」


保健室のドアを開けると、消毒液の匂いとコーヒーの匂いが混ざって独特な匂いがした。

数週間ぶりに見る古賀先生はやっぱりアラフォーには見えない。


「あの、ちょっとここにいてもいいですか」

「もちろん。私は今からちょっと留守にするけど、ちょうど寝てる生徒もいないし好きなように使って」


職員室に行かなきゃいけなくて、と眉を下げた古賀先生にお礼を言って中に入らせてもらう。

保健室に来たのは四月の身体測定以来で落ち着かないような気がしたけれど、ベッドからいつも洗濯部が使っている洗剤の匂いがして、少し気持ちが和らいだ。

米川さんは古賀先生が保健室から出て行くのを見送って、せっかくならベッド使っちゃお、と言いながら倒れ込むようにして窓際のベッドに寝転んだ。


「っていうかびっくりしたんだけど。魔女先生と友だちなの?」

「と、友だちというか……お世話になってるというか……」


曖昧に答えながら、私は米川さんが寝転んだ隣のベッドに腰掛ける。

仰向けに寝転んでいた米川さんは顔だけ私のほうに向けて、そうなんだ、と呟いた。