「ところで」


しばらく走ったところで、米川さんが口を開いた。


「あたしら、どこに向かってんの?」

「あ、えっと、どこか話が出来る場所に……」


そこでふと思いついたのは体育館横のベンチ。綺麗に花が植えられているそこは、人通りも少なくて、ぼっち飯するときの特等席だ。

あそこなら、と提案しようとして、外は雨が降っていたことを思い出す。

となると選択肢はかなり限られる。

屋根のあるところで、なおかつ先生たちに見つからなさそうなところ。


「あ」

「なに」

「思いついた……!」


そう言って再び走り出した私を、米川さんは不思議そうにしていた。

頭に浮かんだのは、好きなときに来ていいからね、と笑顔を浮かべたアラフォーの魔女のところ。

きっと匿ってくれるだろうと踏んで、保健室のある一階まで階段を駆け下りた。