(大丈夫)


他の文字に比べて大きく書かれていたその三文字が、私の背中を押す。


(俺もいる)


今は隣にいないけれど、真央くんはいつだって私の味方でいてくれる。

これから私が米川さんと話すことに失敗したとしても、五号館二階奥の空き教室で、呆れた顔でオレンジジュースかココアを淹れて、私の愚痴を聞いてくれる。


――そんな気がしたんだ。




「よ、……米川さん」


意を決して発した声は、少しだけ震えていた。

窓の外の雨音とか、教室のざわめきとか、廊下の笑い声とか、そういったものは全部遠く聞こえた。

米川さんの明るい髪が蛍光灯に照らされてさらに明るい色になっていた。


「あの、私」


話したいことがあって、と言いかけたとき。

キーンコーンカーンコーン、と遮るように本鈴が鳴った。