「雨かよ!」


幸先悪いな、と呟いた日向先輩。その手には退部届が握られていた。

朝七時半。サーッと雨の降る月曜日。


「梅雨なんだから仕方ないですよ。ほら、出ていくなら出ていってください」

「葵も言うようになったな! 嬉しいけど寂しいわ!」


真央くんは棚の上で三人分の飲み物を用意していくれている。雨の影響で少し肌寒い今日は、温かいココアに限るな、なんて思いながらその様子を眺めた。


「俺だって、紫苑先輩のときみたいな感動の別れをしたいわけだ!」

「はあ、なるほど……」

「え、俺の扱いひどくね?」


私は真央くんからマグカップを受け取って、いつものパイプ椅子に座る。日向先輩も同じようにマグカップを受け取り、早速口をつけた。


土曜日、走り出した日向先輩を追いかけていくと、すでに和やかに話をする二人の姿があった。

私たちの存在に気づいた村瀬さんがいつもの爽やかな笑顔で、連れて来てくれてありがとう、と言ってくれて。

その言葉を聞いた私と真央くんは、朝十時から日向先輩の家の前で張り込みをした甲斐があったと、息を吐いたのだった。