それはまるで、一年生ながらアンカーを任されたときの気持ちみたいだった。
誰かに頼りにされるということは、自分を認めてもらえたからこそ。
だから嬉しいのだと、日向はよく知っていた。
「それに、あの、こんなことを言うのは厚かましいかもしれないんですけど……」
「?」
「……放っておけなくて」
日向先輩、まるで私みたいだったから。
葵が毎日持ってきている黒いケースの中には、楽器が入っているのだと知っていた。でもそれがどういう楽器なのかということは、一度も開かれていないため分からない。
それでも、開けないくせにそのケースを持ってくるということは、まだ未練があって、勇気が出ないだけなのだろうと想像していた。
そう。
自分と同じように。
「……リレー、何時から?」
ぽつりと呟いた日向を、両側にいた後輩二人が嬉しそうな顔で覗き込む。
それが妙に恥ずかしくて、二人より先に足を踏み出した。
「出張洗濯部なら、部長らしくみんなを導いていかないとな!」
冗談めかしてそう言って走り出す。
両腕に引っ付いたままの後輩は、突然走り出した日向に驚きながらも、何とかついていこうと脚を必死に動かした。