周りの歓声がだんだんと聞こえなくなっていく。自分の心臓の音だけが、ドクリ、ドクリ、と聞こえた。
テイクオーバーゾーンの青いラインから十一歩とシューズ半分。何度も何度も先輩たちとバトン練習をして掴んだ距離。そこに置いたマークをじっと見つめた。
あと少し、あと少し、あと。
第三走者の先輩がそこに来た瞬間、飛び出した。
バトンは上手く渡ったと思う。この時点で自分たちは四位だった。しかし、すぐ前に三位が見えた。
行ける、そう思った。
会場のわっという歓声も、自分の心臓の音も、すっと遠くに消えた。
もう少し、もう少し。
確実に背中は近付いて見えるのに、自分の脚は思うように動かなかった。予選の疲れが残っているのかと思った。自分はもっといけると思った。
一年生である自分に任せてくれたのだ、先輩たちは。補欠として名を連ねていた先輩たちだって、本当は走りたかったに違いない。それでも自分にアンカーを任せて、サポートに回ってくれたのだ。
ここで負けるわけにはいかなかった。
何としても、あの背中に並んで、追い越して、そして。
あ、と思ったときにはすでに手遅れで。
ゴール直前、すっと足が抜けたような気がした。
そのまま倒れ込むようにゴールした。
電光掲示板に映し出された自分たちの高校は、四位だった。