静まり返った競技場。


『オンユアマークス』


スターターの低い声が聞こえる。

第一走者全員がスタブロにつき、身体の動きを止める。


『セット』


ゆっくりと腰が上がった。

パン、と大きな合図が競技場に響き渡った。


ファイト。スタンドから自分たちの高校の名前を叫ぶ声が聞こえる。

陸上競技の中でも花型であるリレーの決勝。この日一番の盛り上がりを感じながら、日向は第四コーナーからレースを見ていた。


第一走者から第二走者へのバトンはとても綺麗に渡った。

よし、と心の中でガッツポーズをしている間に、隣のレーンに抜かされる。第二走者は三年生の中で一番速い先輩が走っていたが、必死なのは自分たちだけではないということを知ったような気がした。

第二走者から第三走者へのバトンはちょっと詰まったように感じたけれど、ちゃんと渡った。第三走者の先輩がこちらへ近付いてくる。