だからといって、ここで引くわけにはいかなかった。


「それは、どうしてですか」


視線を作りかけのてるてる坊主に落とした日向先輩を、じっと見つめて口を開いた。

少し低くなった声。ああ、また私は核心に触れることを言ってしまうのかもしれない。そう心のどこかで思いながらも、止めることはできそうにもなかった。


「俺が行ったって、どうにもならないだろ。たぶん邪魔になるだけだ」

「日向先輩が行かないのは、未練があるからじゃないですか」


私の言葉に、ぴくりと日向先輩の肩が揺れた。


分かってるんだ、きっと。

村瀬さんたちが走っている様子を見たら、心を揺さぶられるって。また走りたくなるって。


でも、誰よりも熱心な日向先輩のことだ。一度辞めてしまった中途半端な自分が、のこのこと戻ることが許せないのだろう。いくら周りがそれを望んでいて、誰ものこのこだなんて思わなかったとしても、自分が許せないのだろう。


だってそうじゃなきゃ、こんな苦しそうな顔をしない。