いまだに誘い方が分からない私は、ちらりと真央くんを見た。ドアの近くに立ったまま、私たちがてるてる坊主を作る様子を見ていた真央くんは、私の視線に気づいて持っていたスケッチブックを開く。

そして、左手でサラサラと文字を書き始めたかと思えば、そのまま私の隣に座り、ドン、と机の上にスケッチブックを置いた。


「お?」

「へ?」


突然の真央くんの行動に、日向先輩と私の間抜けな声が響く。

ぽかんと口を開けたまま真央くんを見ると、真央くんはスケッチブックを見るように顎で示した。


(土曜日 出張洗濯部)


「……出張?」


日向先輩は不思議そうに首を傾げて呟く。真央くんはもう一度スケッチブックを手に取り、左手を走らせた。

ドン、と再び机の上に置かれたスケッチブックには、村瀬さんが言っていた競技場の名前が書かれていた。私は思わず真央くんを見上げた。そして小声で呼びかける。


「ちょっとちょっと、あれは直球すぎるんじゃない!?」


スケッチブックに視線を落としたっきり何も言わなくなった日向先輩に背を向けて、ひそひそと真央くんの耳元で話す。

洗濯部の活動に誰よりも熱心な日向先輩は、出張っていう響きには弱いだろう。いや、まあ、出張っていうのもよく分からないけれど。