いつだったか、前にもこんなふうに真央くんに話を聞いてもらったことがある。

特に言葉をかけてくれるわけでもないのに、その隣にいるととても落ち着いて、話を聞いてもらうだけで心が軽くなるような気がするのだ。


そういえば、あのとき部室に入ってきた女の人は一体どうなったのだろう。

何となくの予想だけれど、あの人は真央くんのお母さんだと思う。

そして多分、真央くんが“死にかけ”になった理由もそこにあるのだろう。


ぼんやりとそんなことを考えながら、もう一度真央くんの顔を見る。

今にも消えそうな儚さを持った美青年は、私の視線に気づいてゆっくりとこちらを向く。



「……」


な、に。

ゆっくりとその口が動いた。

何でもない、と首を振って私はオムライスにスプーンを突き刺す。