「一年生の戸田葵(とだあおい)です。今日からおせ、お世話になりますよろしくお願いします……」
噛んじゃった、という恥ずかしさで最後のほうはもごもごと消えるように言った。
長く伸ばした前髪で自分を隠しながら、様子を窺っていれば、特に気にした様子もなく笑いかけてくれる先輩二人。
「葵ちゃん。よろしくね」
「よろしく葵! 期待してんぞ!」
その屈託のない笑顔に、ようやく緊張が解けていくような気がして、私もぎこちなく口角を上げた。
「ということで、洗濯部はついに部員が四人になりました! 乾杯!」
「え、あ、か、乾杯」
突然グラスを持ち上げてそう言った日向先輩。遅れて私もグラスを持ち上げ、コツンと日向先輩のそれとぶつける。
「喜ぶようなことなのかしらね」
「何言ってんすか紫苑先輩、仲間が増えたんだから喜ぶべきだろ」
「あんたは相変わらずね」
呆れたように溜め息を吐いて、紫苑先輩は頬杖をつく。気だるげな仕草も絵になるのは、その美貌からだろうか。
オレンジジュースの入ったグラスの周りには結露がついていて、そっとなぞると指に水滴がついてきた。
日向先輩は仲間について何やら熱く語っている。海賊王になりたい少年も火影になりたい忍者も仲間は大切にしてきたんだとか。
どんどん論点がずれていく話を半分聞き流しながら、私は前髪の隙間からちらりと窓際へ視線を向けた。