気づけば私はそこにいた。
それまで何をしていたのか、ぼんやりする頭の中で考えるけれど分からない。
風の涼しい五月初旬、雲ひとつない快晴。
野球部のノックの音と、陸上部の雷管の音、水泳部のぱしゃりと水が跳ねる音、そしてサッカー部のホイッスルの音。それに乗っかる吹奏楽部のチューニングの音。
渡り廊下の突き当り、部活の勧誘ポスターが所狭しと貼られた掲示板。
思い思いの放課後を過ごす生徒たちの音が聞こえるその場所に、私はいた。
「……私はついに馬鹿になったのか」
普段なら立ち寄ることのない、むしろ避けて通るようなその場所に、何故私はいるのか。
思い出そうとしても全く思い出せない自分に、呆然としながら言葉を落とした。
部員を獲得するべく、それぞれ趣向を凝らしたたくさんのポスターは、私の心臓を煩く揺らす。
ドクリ、ドクリ、と音がした。
耐え切れず目を逸らそうとしたとき、不意に視界の隅に入った一枚のポスター。
掲示板の一番端に追いやられていて今にも破れそうなそれが、何だかとても不憫に思えて、ゆっくりと見つめた。
活動日時、活動場所、活動内容が書かれた至ってシンプルなそのポスター。
勉強との両立可、未経験者歓迎の文字。
そのまま視線を下げれば、右下に書かれた文字が目に入った。
「……“洗濯部”?」