「そんで、そこにいるのが遠藤真央(えんどうまお)」


日向先輩が目を向けた窓際。一人離れてパイプ椅子に座り、こちらを睨むように見ている美青年。

襟元についている校章は青。私と同じ一年生の色だ。


「多分ちょっと今は人見知りしてるんだと思うけど、悪い奴じゃないからさ! きっと仲良くなれると思うよ」

「よ、よろしく……」


小さく言ってみたものの、睨むような視線がふいと外される。つまり無視である。


「……先輩、私仲良くなれる気がしません……」

「まあ、ああいう奴だから気にすんな! お互いそのうち慣れるって」


そう言って日向先輩は笑うけれど、私としては不安でしかない。

真央くんはすでに興味がなくなったようで、ベランダの洗濯物が風で泳ぐ様子を眺めていた。



「じゃあ、次」

「へ」

「あなたの番よ」


日向先輩と紫苑先輩、二人から促されて気づく。そうか、私はまだ名乗ってすらいなかった。

オレンジジュースの入ったグラスを両手で持って、乾いた喉を少し潤す。口の中に残る酸味を感じながら、私はパイプ椅子に座り直し、改めて口を開いた。