「いい走りをするよ。三浦が、また俺たちと走りたいと思うような、そんな走りをするから」


日向先輩は、幸せ者だ。

私が欲しくて堪らなかったものを持っている。こんなに純粋に思ってくれる人がいる。


だから、連れて来て。もう一度そう言った村瀬さん。

隣の真央くんに確認するように視線を向ければ、こくりと小さく頷いてくれた。私もそれに頷きを返して、視線を戻す。



「……必ず、連れて行きます」



私の返事を聞いて、村瀬さんはほっとしたように笑顔を見せた。




「はああああ、よかった……」

「え」

「いや、ごめん。あいつ結構頑固なところあるから、俺から言っても絶対来ないし」

「あ、確かに……」


その様子が簡単に想像できて思わず同意する。そんな私に村瀬さんは、葵ちゃんは三浦の扱いに慣れてきたな、と言って可笑しそうに笑った。