その日向先輩の姿を想像するのはとても容易なことだった。きっと今と同じように、一生懸命に取り組むような人だったのだろう。
「それが知らぬ間に、三浦の重圧になっていたんだと思う」
「……それ、は」
「脚に違和感があっても誰にも相談できないような、そんな空気が流れてたから」
ただただ純粋な期待が、その背にのしかかる。誰も日向先輩を潰そうと思って期待していたわけではない。そのことが分かっていたからこそ、一人で抱え込むしかなかったのだろう。
脚に違和感を抱えたまま、日向先輩は走っていた。でもそれが爆発する日は必ず来る。
「俺たちが三浦を潰したんだ」
怪我をして走れなくなった日向先輩のことを、誰も責めたりはしなかった。治ったらまた一緒に練習をするものだと思っていたそうだ。
まるでそれは、私自身の話を聞いているようだった。
部のみんなから期待されながら、主力として活躍していたトランペット吹きとスプリンター。知らぬ間に重圧となっていたそれは、また元の場所に戻ることに対する恐怖へと変わった。
臆病な私は人と関わることを避けた。日向先輩は陸上へ向けていた情熱を洗濯へと向けることで昇華した。
その状況がほとんど同じで、思わず息が零れる。