授業中もずっと、考えていたんだ。
いつもならもっとごちゃごちゃ考えて、結局何も言えない臆病な私が、どうして口を出してしまったのか。
それはもう完全に調子に乗っていたとしか思えない。
日向先輩のことを分かったつもりになっていた。
私たちは仲間だから、話してくれるんじゃないかって、どこかで思ってしまっていた。
紫苑先輩のことを救えたのは偶然だったのに、それが私の変な自信になっていたのかもしれない。
その人にとってそれなりの理由がなければ、きっと“死にかけ”にはなっていない。
私が屋上に行ったのも、周りからしてみれば小さな悩みに見えるだろう。でも、当人は必死でそれと闘っているのだ。悩みの大きさを他人のものと比べることなんて、誰にも出来ない。
それを分かっているからこそ、今までみんな核心に触れないように過ごしてきたのに、私がそれを壊した。
軽々しく触れるべきではなかったのだ。
空っぽの洗濯かごを抱え直す。
真央くんの色素の薄い瞳がこちらをじっと見ていることには気づいていたけれど、情けない顔を見せたくなくて意地でも振り向かなかった。