「日向先輩……」
普段覗かない棚の後ろ。壁との隙間に溜まっていたホコリにげんなりしながら顔を上げる。
「あったか!?」
「いや、見当たらないです……」
「まじかよ! 俺どうしたらいい!?」
そう言って頭を抱えた日向先輩を無視して、私はホウキの柄にフローリングクリーナーの立体吸着シートを巻き付けて輪ゴムで留める。それを棚と壁の間に入れてごそごそ動かせば、ずずずっとホコリが引っ付いてきた。
どうして朝七時半から部室の掃除をするような羽目になったのか。その原因は日向先輩だった。
「どこ行ったんだ俺の進路希望調査の紙は!」
「紙飛行機とか作ってるからですよ……」
「まったくその通りだ! 俺の馬鹿!」
今日提出しないとボコられる、と呟きながら自分のリュックの中をもう一度漁っている日向先輩。私はそれを横目にホコリの付いたシートをごみ箱に突っ込んだ。
真央くんは、どうやら紫苑先輩の似顔絵を描いているようだった。納得がいくまで描き続けるスタイルは相変わらずで、スケッチブックをめくる音がたびたび聞こえてきている。