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「へえ、紫苑さんが引退か」
放課後のグラウンド。今日も相変わらず爽やかな陸上部員の村瀬さんは、三人になった私たちをいち早く見つけて声をかけてきた。
陸上部もつい最近三年生が全員引退したらしく、納得したように頷いている。
「陸部の三年生誰も残ってねーのか」
意外そうに声を上げたのは日向先輩だった。どういうことかと首を傾げた私に、陸上は個人競技だから強い人は夏まで残ったりするんだよ、と村瀬さんが説明してくれた。
「まあ一個上は人数自体少なかったしな。せめてリレーだけでも残れたらよかったんだけど、他のところもだいぶ仕上げてきてたから」
村瀬さんはそう言いながら、ちらりと日向先輩の顔を見た。その視線の動きにつられて私も日向先輩を見る。私たち二人の視線を受けた日向先輩は、何だよ、と怪訝そうな表情を浮かべて首を傾げた。
「いや、別に」
「何だよ、村瀬は本当に俺のこと好きだな!」
「ああ!?」