とん、と日向先輩の肩を叩いた紫苑先輩は、そのまま窓際にいた真央くんへ視線を向ける。


「真央くん」


小さく名前を呼ばれると、真央くんはパイプ椅子を引きずって、紫苑先輩の横へ座った。

正統派アイドルのようなイケメンと、色素の薄い美青年が並んだ様子は、まさに美の暴力だった。眩暈すら覚えるその光景に、私はまた俯いた。


「私のことも素敵に描いてくれるかしら。できれば、……そうね、超絶美少女にしておいてくれる?」

「……」

「あ、待って待って、窓際行こうとしないで~!」


パイプ椅子に座ったまま後ずさろうとした真央くんを、紫苑先輩はケラケラと笑いながら止める。白い目を向けられていてもおかまいなしだ。むしろ白い目を向けられていることを喜んでいるようにも見える。


「私ね、真央くんが感情豊かになっていくのがとても嬉しかったのよ」


不意に紫苑先輩は声のトーンを落とした。真央くんはそんな紫苑先輩をじっと見つめる。その顔に、はっきりと感情が浮かんでいるわけではない。

でも、瞳の強さや醸し出す雰囲気、その行動を注意深く見ていると、分かってくる。真央くんがどんな感情を持っているのか、ぼんやりと伝わってくるのだ。