「私のこと、怖くないの?」
「怖いってどうして」
「だって私は男だよ。桜に会いたくて、桜と話したくて、桜のことが好きで仕方がない男だよ。触れたいとか抱きたいとか、そんな下心ばっかりの男だよ」
畳みかけるように吐き出した。喉元に込み上げてくる熱い何かを、必死に押さえながら桜の顔を見た。
「……怖いわけないじゃない」
桜の眉が下がる。
浮かべていた笑顔が、崩れた。
「ずっと一緒に育ってきて、外出もできない私にいつも会いに来てくれて、色んな話で私を笑顔にしてくれる人のことを、怖いなんて思うわけないじゃない」
その瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
思わず、抱きしめた。抱きしめてしまった。
その細い肩が震えるのを、ぎゅっと力を込めて抱きしめて――ハッとする。
こうやって触れることに桜はまた拒絶を示すのではないだろうか。抱きしめられたことで過去のトラウマを思い出してしまうことはないだろうか。