「ところでさっき、真央くんと何話してたの?」
「え」
興味津々といった様子で聞いてくる美人さん。その問いかけに、ぱっと視線を教室の入口へと向ける。
そこには美青年――真央くん、と呼ばれた男子生徒が牽制するように私を睨んで立っていた。
「いや、……特に面白い話は」
「え! 真央くんが自分から話そうとするなんて、よっぽどのことが無いと有り得ないのに!」
目を丸くしてそう言う美人さん。
それを聞いて私はさらに気持ちが落ち込む。
彼に対して何かをした覚えはないのに拒絶されるとは、そうか、私の存在自体がうざいんだな。
そんなこととっくに分かっていたけど、でも期待して、馬鹿みたいだな私。
長く伸ばした前髪の中で、そっと目を閉じる。
そうすると自分が周りから隠れることができているような気持ちになって落ち着くのだ。
雑念を振り払うように目を閉じたまま軽く頭を振って、ゆっくり瞼を持ち上げた。
「……あの、美人さんですよね」
ぽつり。吐き出した言葉は、意図せず棘を含んでいた。
ハッとしてそれを撤回しようと、また口を開こうとすれば、それより先に美人さんが口を開く。
「え? 私? やだ~嬉しいありがとう! あなたもとっても可愛いわよ」
にこっと笑って、小首を傾げた美人さん。
それを見た瞬間、嫌味っぽい言い方になってしまった自分と、気にも留めず笑顔を見せてくれる彼女に圧倒的な差を感じて、お腹の底あたりから急激に全身が熱を持った。
これはきっと、羞恥心だ。
自覚した途端、私の口は堰を切ったように言葉を並べ出した。