さっそく会いに行った。また拒絶をされたらと思うと、心臓が張り裂けそうだったけれど、それでも会いたかった。

病室のドアをノックすれば、はーい、とずっと聞きたかった声が返事をした。震える手で、ドアを開けた。


『あら!』


向けられた笑顔に、喉の奥が焼けつくようだった。



『はじめまして、……で合ってるかな? 私は桜っていいます』


あなたは、と。首を傾げた桜に、掠れた声で名乗った。


『しおん。紫苑っていうの? じゃあ私たち仲間だね!』


紫苑も桜も花の名前だから、と嬉しそうに笑う。

それ今までに何度も聞いたよ、と心の中で言葉を返す。実際には相槌を打つので精一杯だった。


『桜の花言葉に“私を忘れないで”っていうのがあるんだけど、紫苑の花言葉には“君を忘れない”っていうのがあってね? すごく素敵だと思うんだ、私たち二人の名前でおしゃべりしてるみたいで……って、私しゃべりすぎだね! ごめんね初対面なのに!』



――そのとき、心に決めた。