そんな紫苑が洗濯部に入部したのは、一年の五月のことだった。



『男として、じゃなかったら会いに行けるんじゃない?』


とにかく塞ぎ込んでいた紫苑にそう声を掛けたのは、現在とあまり変わらない見た目をした養護教諭だった。魔女先生と呼ばれているその養護教諭は、立場上からか、事件の全容を把握していた。


最初、紫苑にはその意味が理解できなかった。

男としてじゃなかったら何だ。どういうことだ、と顔を上げた紫苑に養護教諭は女子生徒用の制服とウィッグを手渡した。


彼がそれを身に付けるようになるまで、様々な葛藤があった。

それでも、桜に会いたい気持ちは日に日に大きくなっていった。ずっと一緒に育ってきた幼なじみに抱いていた特別な感情は恋愛感情だったのだと一度自覚してしまえば、もう抑え込むことができなかった。


初めてウィッグをしたとき、自分の顔立ちが整っていることに感謝した。

もともと色白だったことに加え、筋肉の付きにくい細身の体がこんなところで役に立った。

バスケ部にいた頃はそれが嫌で仕方なかったが、出来上がった自分はすらりと背の高いモデルのような女の子だった。