走って、走って、走って、走って、走って。


息が切れようと、足がもつれようと、とにかく走った。必死になって探した。



桜が見つかったと桜の両親から連絡があったのは、しばらくしてからだった。無事なのかと問えば、ただ無言が返ってきた。

慌てて病院へ行った。周りの制止も振り切って駆け込んだ病室の中、変わり果てた姿の桜がいた。

さくら、と震える声で名前を呼んだ。触れようと手を伸ばした。

その瞬間。


『あ、うっ、や……!』


零れた大粒の涙。払いのけられた手。激しくなる呼吸。

それは、――拒絶だった。


桜が強姦未遂事件に巻き込まれたということ、桜が記憶の一部を失っているということ、そして実の父親にも拒絶反応を示したということを、病室の外で、桜の父親がぽつりぽつりと語った。

告げられた事実を呆然と聞いていた。


ただただ、死にたいと思った。