「二人は付き合ってるの?」
へ、と間抜けな声が出た。数秒経ってようやくその問いの意味を理解した私は、勢いよく首を振った。
「いやいやいやいや! 付き合ってないですよ!」
「そうなの? 紫苑が紹介してくれることなんて今までなかったから、てっきり彼女なのかと」
「全然そういうのじゃないですよ! ただの先輩と後輩です!」
というか紫苑先輩は桜さんのことが、と心の中で叫びながら全力で否定をする。
今日は朝から恋バナばっかりだな。みんなそういう話好きなんだな。いや、まあ私も好きだけど。
でもどちらかというと私はいつも聞く側で、標的にされることには慣れていない。
「そっか」
コーヒーを啜りながら呟くように零した桜さん。
どうやら納得してくれたようなその反応に、ああよかった、と息を吐きながら、私もりんごジュースを飲もうとして――固まった。