教室の中央に置かれた大きな机。その周りを囲うように置かれたパイプ椅子。そのうちの一つに腰掛けて、ぐるりと周りを見渡す。

美人さんは教室の入り口から見て左側にある棚の上で、冷蔵庫から出したオレンジジュースを注いでいた。小さめの冷蔵庫の上には、決して新しくはない電子レンジが乗っている。

教室の入口から見て正面にあたるところは、肩くらいの高さの窓があり、壁にはところどころ絵が貼ってあった。

そして右側は、全面窓になっている。その向こうには角部屋だからだろうか、広いベランダがあり、物干し竿にはたくさんの洗濯物が干されていた。


「わあ……」


風によってその洗濯物が一斉に揺れ動く様子は、水族館のイワシの大群に似ている。

よく晴れた青空にその光景は眩しく、思わず目を細めた。




ぼーっと窓の外を見ていると、くすくすと笑う声が近くで聞こえた。


「はい、どうぞ。ストローなくてごめんね」

「あ、ありがとうございます」


顔を上げれば綺麗な笑顔を浮かべた美人さん。差し出されたグラスを受け取って、口をつけようとして、……こういうのってすぐに口をつけてもいいんだろうか、どうなんだろう。

一瞬飲むのを躊躇っていると、それすらも見越したように美人さんは、飲んでいいよと笑った。

その言葉に甘えてグラスに口をつける。カランと氷が音を立てて、オレンジジュースの酸味が口の中に広がった。

美青年と対峙したときにカラカラに喉が渇いたものだから、その冷たさが心地好い。


「ど? おいし?」

「あ、お、美味しいです」


コクコクと頷くと、美人さんは満足したように笑って、私の隣のパイプ椅子に腰掛けた。