「……緊張してる?」


少し、と頷けば柔らかい笑顔が返ってくる。


「別に緊張することないのに~」

「あ、いや、あの、……慣れてなくて」


素直にそう言うと、私もだよ、と桜さんはふっくらとした頬を緩めた。

きっと、事件が起きる前の桜さんはクラスの人気者だったのだろう。桜さんの笑顔に、自分の心が落ち着いていくのを感じながら、私はふとそんなことを思った。

優しくて、可愛くて、細やかな気遣いができて、でも足でドアを開けちゃうようなギャップもあって。そりゃモテモテのイケメンだって、桜さんの虜になるはずだな。

こんな分析が冷静にできるほど緊張が和らいだ私は、ちょっと聞いてもいいかな、と首を傾げた桜さんに頷く。



「葵ちゃんと紫苑って、本当はどんな関係なの?」



ふわり、コーヒーの香りが鼻をくすぐる。カラン、とりんごジュースに浮いた氷が音を立てた。


「…………はい?」

「いや~、言いにくかったら全然いいんだけどね? でもやっぱりほら、一応確認しておきたくて」

「か、確認?」