「お待たせ~!」
ちょうどそのとき、お盆を持った桜さんが足でドアを開けながら部屋に入ってきた。
足でドアを開けるのはやっぱり癖らしく、何度紫苑先輩が注意したとしても直らない。もはや紫苑先輩も半分諦めたように笑っていた。
桜さんと紫苑先輩のマグカップから湯気が立っている。りんごジュースが入ったグラスには、二個の氷が浮いていた。
「ねえ、今日はゲームしない?」
私の隣に腰を下ろして、桜さんはそう言った。突然の提案にまばたきをする。
「ゲームですか?」
「うん。この前紫苑とちょっとハマったゲームがあって」
桜さんの部屋にある小さなテレビの下の戸棚。確かこの辺に、と呟きながら桜さんはその戸棚を漁る。
「あったあった、これ」
そのゲームの名前は私も見たことがあった。四人で対戦することもできる、と最近よくCMが流れている。
やったことないけど大丈夫だろうか。もともと器用なタイプではない私は少し心配になりながらも、友だちと一緒にテレビゲームをするということ自体が久しぶりで、胸が高鳴った。